第2章 キスまでは、あと少し
「だぁーっ!!寝坊したぁっ…!!」
何だよ、このお約束な展開はっ!!
こんな大事な日に寝過ごすなんてマヌケ過ぎる!
ダッシュで身支度を済ませ、プレゼントを引っ掴み家を飛び出した。
小雪とは、11時に春高予選が行われた体育館で待ち合わせ。
彼女の家の近くだし、映画館が併設されたショッピングモールもそんなに遠くない。
二駅電車で移動した先には、雑誌で取り上げられるほど有名なお洒落カフェ。なんでもスイーツが絶品なんだとか。
とにかく、デートにはもってこいの場所が揃っている。
折角アレコレ考えてたってのに出だしからこれかよ!誕生日のデートに遅刻なんて、絶対印象悪いだろ!?
焦燥感に駆られつつ、体育館方面の電車に乗り込んだ。
車窓を流れていく景色は、普段よりもやけにのんびり感じられる。
行き先に到着するまでただ立っていることしか出来ない俺は、逸る気持ちで腕時計に目を落とした。
確実に遅れるな…小雪に連絡しとくか…。
「……あれ?」
いつもボトムスの後ろポッケに突っ込んでるスマホ。
定位置にそれがないのに気づき、上着のポケットやリュックも漁る。
「……」
ヤベ…。
携帯忘れた…!!
クッソ、俺のバカ!
小雪が待ちぼうけ食っちまうじゃねーか!
あー、頼む!早く着いてくれ!!
やけに呑気に走る電車が恨めしい。
尚且つ寝坊したことへの後悔。
そうこうしているうちに、とうとう時計の針は約束の時間を指してしまう。
駅に到着早々、ホームの階段を駆け昇る。
バレーで鍛えた脚力舐めんなよ!?
ここから待ち合わせ場所までは、歩いて20分くらいの距離。
もちろん今は歩いてる場合じゃない!とにかく走るのみ!そんで、一秒でも早く小雪の元に!
改札を抜けて、駅の構内も抜けて、さあこのまま目的地へ!
そう思った時。
駅の出入口の脇でウロウロしているバァちゃんが目に入った。