第2章 キスまでは、あと少し
「小雪。来週の誕生日、楽しみにしてろよ?」
ボンヤリ考え事をしていた私を引き戻す、鉄朗くんの笑顔。
固くなりかけた心はすぐにほぐれていく。
「うん」
鉄朗くんは私のこと大切にしてくれてる。
繋いだ手から、眼差しから、ちゃんと伝わってる。
別に急がなくてもいい。
人よりペースがゆっくりだって、私は鉄朗くんのこと大好きだから。
でもね……
「ねぇ!黒尾先輩やっぱ彼女いるよ!昨日見たの!女子と二人で帰ってた!」
「ウソ!?いないって噂だったじゃん!友達じゃないの?」
「ううん、だって手繋いでたし!」
「うわー!マジだ!ショック~!彼女、どんな人だった!?」
「うーん…。何か、フツー?可愛いっちゃ可愛いけど…。でも黒尾先輩の彼女ならさ、すんごい美人とか、芸能人みたいに可愛い子とか想像しちゃうじゃん?ちょっと拍子抜けーってカンジ?」
―――だよね…。
やっぱ鉄朗くん、モテるんだな…。
昼休みの校舎の中、下級生の女子の噂話が耳に入ってきた。
こんな会話聞いてしまうのは初めてじゃない。
もう、二回目……。
「……」
平気。鉄朗くんはいつも私に "好き" をくれるもん。人の噂なんて気にしなくていい。
そう自分に言い聞かせてみるけれど、何だか上手くいかない。
私は鉄朗くんが大好き。
だけど…
ほんのすこーしだけ、自信をなくしそうになっちゃうことがある。
鉄朗くんは、私のどこを好きになってくれたんだろう…?