第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)
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黎明は案内された部屋を見て、眉を寄せた。必要最低限の掃除すら出来ていないようなそこは、納屋の様にも見えたがそれ自体に文句はない。
問題はおどろおどろしい瘴気の様な霊気がここかしこに付いていることだ。黎明はその発生源である自分の師になる審神者を見て、更に眉を潜める。
何しろ、楽しげに口角を上げて黎明を蔑んでいるのだ。神の声を聴き、神を祀る音を奏でると言われる審神者とは大違いのその表情と態度に既に呆れかけている。
黙っていれば審神者が口を開き、蔑むような声で明日以降の予定を告げてくる。
「ここが貴女の部屋よ。明日から貴女の起床は五時、刀剣たちの食事も作って頂戴。審神者の仕事を教えるのは、そうね……三月後にしましょう」
「三月、ですか?」
「そうよ? 研修期間は半年から一年でしょう? 何も知らないのに仕事なんて任せられないもの。下働きがお似合いよ。内番も刀剣の代わりにやりなさい。最初くらいは教えるために私の刀剣を一人くらいは貸してあげる」
「……承知しました。ここで使う寝具などはどこにありますか?」
何かを言うのも億劫になるほどの態度に、呆れのため息を飲み込んで表情を変えないまま問えば面白くなさそうな表情になった審神者がフンッと鼻を鳴らした。
その様子もただ無感動に、無感情にと心がけ極力呆れなどの負の感情を抑え込んで見つめていれば、やがて審神者は態度を変えない黎明に飽きたのかくるりと踵を返してしまう。
すたすたと歩いて去る姿はあの気だるげな様子が一欠けらもなく、尋ねた寝具の行方も分からない状態のまま放っておかれたので仕方なく畳で素のまま寝ることも覚悟した。
何しろ、修行時代には霊験あらたかな洞穴に行かされた際などには、日帰りなど出来ようはずもなく巫女装束のまま岩肌に座って野宿などもやらされたことがある。
普通そんなことまでするだろうかと遠い目をしたのは記憶としては懐かしい、数年ほど前の話ではあるがそこから言えるのは一つである。
布団などなくても屋根があればどこでも寝れるということだ。