第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)
「黎明様……」
「心配しなくても、屋根があれば十分よ。でも、そうね……私のお給金などはどうなっているの?」
「あ、はい! それはわたくしめがお預かりしております故、審神者専用の通販などもご利用頂けます!」
「あら、そうなのね。なら、一通り確かめ終わったら頼んで良いかしら? ひとまずは持ち込んだ荷物でどうにかなると思うし」
「かしこまりました! でも、何をするんですか?」
「さすがにこんな状態の部屋では寝れないから、とりあえず掃除ね。履いて清めて、結界も敷いてしまいましょう」
結界という言葉にピクリと耳を揺らしたこんのすけが、心配そうに見上げるが黎明はにっこりと微笑むだけで何も言わない。
先ほどの審神者の様子を見るに、下手なことをすれば難癖をつけられる可能性はあるがそれと己の身、どちらが大事かと問われれば己の身だと即答できる程度にはこの本丸は危ういのだ。
黎明はこんのすけを宥めるためにその背を撫でてから、掃除用具を探そうと部屋の外へ出る。
「おっと……」
「え? あ、明石、国行様?」
「名前覚えてくれはったん?」
「ええ、先ほどは助けて頂いてありがとうございます。頬は大丈夫ですか?」
「これくらいは軽傷にもならんさかい、気にせんで構わんよ。説明、足りてないんやろ? 道具とか場所教えに来たんやけど」
入口を出た所で誰かにぶつかりそうになり動きを止めると相手も驚いたのか声を漏らした。頭上から響く声に顔を上げれば、この本丸に来てから何度も見ている明石国行の姿があった。
名乗られてはいないが、先ほど審神者が叫んでいたこともありその名を口にすればにこりと笑いかけられる。
出会った当初や先ほど審神者が絡んでいた時には、最後の瞬間にしか見れなかった笑みに目を瞬かせながらもその頬に引かれた朱に眉を潜め黎明は無意識に手を伸ばした。
触れるか触れないかの所で我に返って手を引くとクツリと喉奥で笑った明石が、ぽんっと黎明の頭に手を置いて撫でてきた。
いつもなら嫌悪感を沸かせるところではあるが、相手は九十九神と言えど神の末席にある人物だからか黎明は素直にその手を受け入れていた。
自分でも判らない、その不思議な感覚に意識を向けていると明石が本丸の案内などをしてくれるという。