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黎明即起

第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)


こんのすけが慌てるのを制して五虎退に鍛刀を返すと、懐に入れていた懐紙にその髪を包んで大倶利伽羅へと差し出した。

「きちんと役目を果たした証拠としてお持ちください。その上で、私からこう言われたとお伝えください。『ひと月後、政府の役人が見習い研修の是非を確認しにくる、その時に自分が居なければおかしいと思われるに違いない。だから、今は生かせと、そう言ってきたがどうする』と」
「お、まえ」
「私は見習いです。ですが、同時に役人が監査を入れる理由になります。今までどうやり過ごしてきたのかは存じませんが、私に何かあれば直ちに私のこんのすけが政府に連絡を入れます。そうなって困るのは、貴方に私を狙う様言いつけてきた方でございましょう?」

にこりと、誰の指示であるかを暗に告げながら言う黎明に眉間のしわを一気に深くした大倶利伽羅は、深く溜息を吐くと黎明から懐紙を受け取り黙って背を向けた。
五虎退がその背を呼びとめたが振り返ることはなく、黎明はただその背を見送って五虎退と明石を振り返る。

「お待たせいたしました」
「あんさんはやっぱり面白いお人やねぇ」
「そうかしら? でも、ここの腐敗がどこから始まっているかは一目瞭然だもの。大倶利伽羅様に絡みついていたモノも見覚えがあったし」
「黎明様ッ! 本当に、本当に大丈夫ですかッ?!」

クツリと喉の奥で笑いながら声を掛けてくる明石に首を傾げとぼけていた黎明は、こんのすけと五虎退に飛び付かれて驚きつつも抱き留めると大丈夫だと微笑む。
それからしゃがんで五虎退に視線を合わせると、守ろうとしてくれてありがとうと告げた。

「そ、そんなっ! ぼ、僕は、何も出来なくてッ!」
「いいえ、五虎退様が傍で守ってくださったから、明石様が対峙している間も怖がらず大倶利伽羅様を視ることが出来たのです。とても助かりましたよ」
「ぼ、ぼくはッ!」

ぼとぼとと大粒の涙を零し始めた五虎退に苦笑し、そっと抱き寄せるとその背を撫でる黎明に明石も苦笑しこんのすけは安堵の吐息を吐いて逆立った毛をせっせと宥め始める。
五虎退が落ち着いてから暫く、馬舎に辿り着いた三人がその惨状にまずは掃除と馬の健康状態をチェックしなければと動き出した頃にまた大倶利伽羅が戻ってきて三人を黙って手伝い始めるのに驚くのは十数分後の話である。
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