第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)
02
「こんのすけ、彼は?」
「先ほどの刀剣男子ですか?」
「そう、やる気なさそうだった割にすごく警戒されてたわ」
黎明が目を細め、先ほどの男性が去っていった方向を見つめながら腕の中で大人しくしていたこんのすけに声を掛けた。
こんのすけは問われるままに刀剣男子に関する資料を呼びだすと先ほどの男性に酷似した絵姿を見つけ黎明の前にモニターを浮かばせる。
「明石国行様の様ですね。三条大橋を侵略しようとする敵部隊の大将を倒した時に稀に拾うことが出来る刀の様です」
「ふーん……?」
黎明は目の前に出されたモニターを見ながら、こんのすけの説明にイマイチ納得がいかないという雰囲気で頷く。
彼が本当にこの画面の明石国行であるならやはり顕現の際にこの本丸と同様の霊気を纏うはずである。それは審神者との契約を経て、現代にその姿を留めることを約束した証。
源となる霊気を纏わなければ成しえない事であるのに、彼は全く違う霊気を纏っている様だった。
――しかも、あの霊気……私のモノにとても似ていた……
考え込みそうになった黎明の思考を止めたのは、カサリという葉の擦れる音と重たく暗い霊気を纏った気配だった。
顔を上げ、こんのすけを抱えた腕に僅かばかり力を込めてその気配の方向に視線を向けると、着物を着崩して気だるげな表情の小柄な女性が姿を現すところだった。
「アナタが明石の言ってた見習いさん?」
「……貴女は?」
化粧を施したその表情は人形のように可愛らしい見た目ではあったが、黎明にはその奥にある禍々しいまでの我欲がちらついて見えて吐き気を堪えた。
漂ってくる甘ったるい匂いと同時に鼻を突くのは卵が腐りかけたような悪臭だった。
「あら、名乗りもしないのに名前を聞くの? そうね……私はココの審神者よ。貴女の先輩。貴女は?」
「黎明」
「……礼儀がなってないようね?」
なんとか顔を顰めない様にと気をつけながらも、相手に礼を尽くす気になれず問われた名だけを返せば機嫌を損ねたらしい。
苛立たしげな表情でそう言った女性がカツカツと足元が石畳なら大きな音が鳴りそうな足取りで近づき、黎明に手を伸ばしてくる。