第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)
「何より、私にとっての大切なモノがそこに在る、と私の身の内の何かが教えてくれているわ」
「……それは、お前の思い込みや独りよがりではなく、か?」
「ええ、もちろん。身の内の奥の方、胸のその奥、ともすれば己の思考とは全くかけ離れた底から声が聞こえる気がするの」
「そうか、ならばそれはお前を加護する神様のお導きなのじゃろう。元々、一度断れば催促はないと言うその職を何度となく依頼が訪れたのも不思議なもんじゃて」
「そうなの?」
「そうじゃ、普通は名簿があり、声を掛けた者、その返事、状況などが管理されとるもんじゃ。そうじゃなければ簡単に潜り込み悪用されてしまうからな」
「……そうね、なのに私には何度も来たのはなぜ?」
「判らぬ、何かの折に何度も断っていることを伝えたら、そんな記録は一つもないと言われたくらいじゃ。きっとお前が審神者になるのは人智を超えた力の働きかけなのじゃろう」
感慨深く呟いた壮年の男性は、一度目を閉じて深く息を吐くと持っていた封書の中身を取り出す。
筆を執り、女性に差し出すと一カ所を指示してサインをさせた。
真名で書くな、と言う言葉に女性は頷き書き慣れた字を書き込むと封書がふわりと浮きあがりぽんっという音と共に狐が一匹現れた。
狐は己を『こんのすけ』だと名乗り、この先の案内人でありサポート役であること、政府との連絡を取る手段になること、そして管狐であることを伝え女性をその先へと誘う。
女性はそれに応じ、しかし一度家に帰り両親に事の次第を説明する必要があることを伝え、壮年の男性に挨拶をするとその場を去っていった。
――これがすべての始まりである。