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黎明即起

第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)


違うんですか? と、不満そうな女性はぐっと言葉に詰まった壮年の男性を見て溜飲を下げると座り直す。
そうしてもう一度向かい合うと話を先に進めるように促した。
壮年の男性は、そんな女性に仕方がないと深いため息を吐きながら重い口を開く。

「結婚相手まで自由にせいとは言うておらなんだ。まぁ、選んだ女性は素晴らしいし、孫はこんなにも可愛いが……」
「おじい様、お話」
「ああ、分かっとるよ。さて、断ってもしつこかった依頼についてなんだが、お前は知っとるか? 最近、審神者、という職を政府が適性のある者に与え付喪神を率いらせて歴史の修正をしておることを」
「いえ、まったく」
「そうか……。その審神者、という職にお前を就けたいと度々依頼があってな。お前はここに席を置いているわけでもなく、身の内の霊力を抑え操り良き方へ使うために一時的に修行に来ただけの者。お断りしとったんじゃが」
「引いてくれない?」

壮年の男性は女性が継いだ言葉に一つ頷くと、自宅まで乗り込むとまで言われたので仕方なく是の返事を返したと告げた。
女性は眉を寄せ何事か考えてから顔を上げると壮年の男性を見た。
男性の顔は眉間に皺が寄ったまま、顔を上げた女性の表情を見ると更にその皺を深くした。
まるで女性の返答を解っていて、それに反対したい、と言いたげな表情であったが女性は全く意に介さない。

「行くわ」
「……お前、詳細も聞かずに」
「『審神者』を欲しているのでしょう?」
「む……だがな?」
「面白そうだし」
「それが本音だろう」
「だって、大学の講義聞いてても暇なんだもの。寄ってくるのは家のお金を狙うハイエナばかりだし」

女性は不満そうに頬を膨らまし、私は私、家は家、それを判らぬ輩に用はないと言い切る。
審神者とは、古来は神を降ろし神託をお伺いするために用意された美しい庭のこと、転じて今では神の声を聴き、その身に降ろすことが出来る依り代になれる者を指す。
神を呼ぶために琴を奏でていた歴史も残っており、琴の奏者を審神者と呼ぶこともあるが、いずれも神の声を聴かんがためのモノである。
しかし、女性はそんな謂れ以上に審神者の職と聞いた瞬間に何かの予感を感じたのだ。
女性にとって何物にも代えがたい大切なモノが見つかる予感を……。
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