第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)
プロローグ
ろうそくの火のみが周囲を照らしているほの暗い室内。
障子の向こうには煌々と照る月が在る。
室内には壮年の男性が一人と年若いまだ少女と言えそうな女性が一人、相対して座っている。
両者ともに凛とした空気を纏い、二人が呼吸するだけで辺りの空気がキンッと澄み渡っていく。
それほどまでにこの二人の霊力は類を見ない量を示していた。
とはいえ、それも一瞬の間だけで直ぐに彼らの身の内に収められ見えなくなったのだが……。
「ご無沙汰しております、長にはご機嫌麗しく……」
「よい、堅苦しいのはなしじゃ」
「……おじい様、お元気でした?」
「ああ、お前も息災のようだの黎明や」
「はい、変わりなく。こちらをお暇してまだ一年、呼び出される様なことはしていないつもりでしたが?」
「もちろん、もちろん。お前さんは見た限り変わりなく、きちんと過ごしておるのが判る力をしとるよ」
「では?」
「うむ、それがな、お前さんはこの神社に連なる者ではないと何度もお断りしとったんじゃが、どうにも断りきれんことが出来てしまってな」
深く頭を下げた女性が、挨拶の口上を口にしようとしたところで割って入った壮年の男性の言葉に顔を上げた女性がゆるりと緊迫した空気を解いていく。
ふわりと華が綻び揺れたような雰囲気が辺りを見たし、笑んだ女性の顔は幼さを残している。
しかし、話の先を問われた壮年の男性は眉間に皺を寄せて言い渋っているので、女性はそのことにあからさまに嫌そうな表情を見せて立ち上がろうとした。
「あ、待て待て、言う、言うから待て」
「ならさっさと言ってください。私だってまだ学生の身ですから暇じゃないんですよ?」
「悪かった、お前さん全然顔出さんからついなぁ」
「つい、じゃありません。ここはあまり来たくないんです。会いたいならうちに来ればいいじゃないですか」
「お前には会いたいがあの馬鹿息子には会いたくない」
「何言ってるんです、力のない者にこの地は居づらい、出て行くがよい、と言ったのはおじい様だと聞いています」