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黎明即起

第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)


06

結局、五虎退の後に食堂である部屋へと顔を出したのは判る人間だけでもと声を掛けに出ていた明石だけだった。
三人と一匹だけで朝ごはんを済ませた黎明は、明石とこんのすけに声を掛けてこの後の予定を決め始める。

「さて。ここに置いておいても良いけれど火の番も居ないし、お鍋は一度厨に下げましょう。この後は先に馬たちの様子を見に行くわ」
「了解。せやったら鍋は俺が運びますから。コンロはそんままでええですよ」
「コンロくらい軽いから私が運ぶわ」
「あ、あのっ! ぼ、ぼくがっ、そのっ」
「五虎退様?」

明石がまだ半分以上粥の入った鍋を持ち上げ、黎明がコンロを手に取ろうとした所でパシッという音と共に柔らかな金の糸が視界に入り込む。
一瞬何かと思った黎明は聞こえた声に目を瞬かせ、目の前で揺れた金糸が糸ではなく髪の毛であることに気付く。
忘れていたわけではないが、入室時の戸惑った様子から声を掛けたりましてや近づいて手を伸ばしてくるとは思っていなかったので思考から抜けていたのだ。
黎明が持とうとしたコンロをひょいっと抱え上げた金糸の持ち主が、黎明を見つめてまごつきながらも口を開く。

「お、美味しかったから。お、お礼に僕も手伝い、ます」
「よろしいのですか? ご自分のご予定などは」
「ない、です……。僕は、主様のお役に立てない、ので……」

きゅっとコンロの両端を握りしめて俯いた五虎退の口から零れた言葉に僅かに眉を寄せたが直ぐに表情を改めると身を屈めて五虎退の瞳を覗き込む。
交わった視線は自信なさげに揺らぎ、暫く彷徨ってからおずおずと黎明に合わされた。
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