第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)
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明石が食堂だという部屋を出て暫く、黎明はぐるりと部屋を見渡していた。
こんのすけは落ち着かないのか黎明の傍でピタリと身体を引っ付けて、ピリピリとした空気に尻尾がいつのまにか異様に膨らんだまま戻らない状態で寄り添っている。
「ここはまだ埃が少ないのかしら? 空気が淀んでいるのはどうしようもないとは思うけど、生きているはずの馬たちの様子を見たらまずは掃除をしないと、ね」
「黎明様」
「大丈夫よ、こんのすけ。多分、何とかなるわ」
不安そうな雰囲気のこんのすけの背に手を伸ばし、ゆっくりと撫でるとゆるゆると強張っている身体から力が抜け落ちていく。
それに合わせて倍以上に膨らんでいた尻尾が通常の状態に戻るのを横目に、黎明はスッと廊下側の障子を見た。
とっとっとっ、ととても軽く気配の薄い足音が近づいてくるのに気付いたのだ。誰か、もしくは何かが来るのか目を細め、極めて無表情を作って様子を窺えばそっと開いた障子からは薄い金の髪が覗いた。
柔らかそうなその毛先がふんわりと宙を舞い、ほんのりと覗きこめるだけの薄い隙間から誰かが様子を窺っている。
未だ夜の残り香がする早朝、明石以外は知らぬであろう黎明の気配に警戒しているのだろうと予想が出来た。
こんのすけが思わずという風にビクリと肩を跳ねさせるのを、黎明はそっと口元に人差し指を添えて大人しくさせる。息を殺してこちらを伺う気配に素知らぬ風を装い待っていれば、そろり、そろりと障子が開いた。