第1章 恋愛に至る道(出会いから恋に辿り着くまで)
じっと目を合せて覗き込めば、その瞳には心配の色が僅かに覗いていた。
「ありがとうございます。丁度掃除道具を探しに行こうかと思ってました」
「それはええタイミングやったね。ほんなら、他の場所も案内しつつ掃除道具取りに行こか」
「はい、よろしくお願いします。こんのすけ、行くわよ」
「あ、はい!」
やる気がなさそうという印象が嘘のように自分へ心を砕く目の前の刀剣に、黎明はその様子を観察するように視線を向ける。
腕の中には一匹で置いておいては危なかろうとこんのすけを抱きかかえ、荷物も放置して触られるのは困ると手にしていれば明石がさり気なく手を伸ばし持ってくれた。
女性慣れしているようでもあるが、単純な厚意だろうとその手に甘えて荷物を渡すと僅かに驚いたような視線でチラリと見てくる。
見返せばフッと口元を緩めて雰囲気がまた一つ、柔らかくなった気配がした。
長い廊下を歩き、途中で風呂、厠、厨、食事をする大広間と案内され、一つの廊下の前で止まると明石はその先を指差した。
「この先がさっきのこの本丸の主はんが居る離れや。用があってもなくても、この先には近づかん方がええ。まぁ、あんさんなら近づいても平気な気ぃもするけどな」
「それは、どういう意味?」
「この本丸の異常に、あんさんは気付いてはるんやろ?」
異常、と断定した明石に、黎明がハッとして振り仰ぐと荷物を持っていない方の手が人指し指を立てて唇の前に置かれていた。
これ以上は言えないとでも言いたげな仕草に口を閉じると、小さくため息が漏れてしまった。
俯けば下から心配そうなこんのすけが覗き込んでくる。それを大丈夫というように微笑み、頭を撫でれば垂れていた尻尾がゆらりと揺れて手に擦り寄られた。