第12章 その件に関しましては
思わず「イエーイ!」と叫びそうになって慌てて口を抑えた。ノったら当てられるじゃないか。巧妙な罠だこれは。えーと、正解はなんだっけ。
「ヘイヘイ緑谷ァ!それは分かってるって顔だな!?セイイエス!」
踊るように指を指された出久が、挙動不審になりながら立ち上がった。頑張れ出久!ってか出久なら答え分かってるよな。頭いいし、絶対予習してきてるだろうし。それを見抜くとは流石プロヒーロー。侮れない。
「あ……えっと、4番、です!関係詞の場所が、違うから……」
「OKOK!正解だ!やるな少年!ほらハイタッチ!イエーイ!」
「い、いえーい」
引き気味に伸ばされた出久の手と元気にハイタッチして、マイク先生は機嫌よく踵を返した。
「よーし!それじゃあ関係詞の解説をリズミカルにやってくぜ!ミュージックスタート!」
途端に教室を包んだアップテンポな曲に驚いていると、それまでペンケースにみっちりと収まって微動だにしなかったバロンがむくりと体を起こした。ノートに落書きをして遊んでいるバニーの所へトコトコと歩いて行く。一体何をするつもりだ。じっと見つめていると、二匹は手を繋いでいそいそとノートの真ん中へ移動して、ワルツを踊りだした。
「いや、なんでやねん」
スローに情熱的に踊っているバニーとバロンをそっと机の端へ押しやる。なんでワルツ。絶対曲に合ってないだろそれ。踊りづらくない?落とした消しゴムを拾おうとして振り返った麗日が、こちらを見て盛大に噴き出した。
そうこうしている内にプレゼントマイクの単独ライブが終わりを告げ、あっという間に昼休みがやってきた。