第11章 かまってよ、カピバラ様
「トータル種目は単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明するのは時間の無駄なので一括開示する」
「ヤバイ出久、おれ緊張してきた」
「最下位は除籍最下位は除籍最下位は」
空を見つめながらブツブツと恐ろしいことを呟き始めた出久に、周りの人たちがドン引きしている。
「ちなみに除籍はウソな」
一瞬、時が止まった。緊張で険しくなっていた皆の顔が、ぽかんとした間抜け顔になっている。
「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
「はーーーーー!!!!??」
「あんなのウソに決まってるじゃない…ちょっと考えればわかりますわ…」
九十九と一緒に50mを走った女子が、呆れたようにそう言った。
「そゆこと。これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類がある。目ぇ通しとけ」
本気で信じていたのに、まさか他の子たちも嘘だって知ってたのか!?疑心暗鬼になりながら周囲のクラスメイトの顔を見回すと、みんな愕然とした表情だった。よかった、みんな騙されてたっぽい。
順位表に載っている自分の名前は第7位のところにあった。勝己は3位で、出久は最下位。勝己が1位じゃないのって、なんか新鮮でいいな。出久は落ち込んでいるかと思いきや、ブツブツと何かを唱えていたからきっと次へ向けてのシミュレーションをしているのだろう。あいつはこれから伸びる。間違いなく。そして勝負を吹っかけた轟は、なんと2位だった。すごい個性を持っている上に、上手い具合にテスト内容に沿った使い方をしていたから、納得の結果だ。完敗だ。
「轟ー!お前の個性すごいな。氷って超かっこいいじゃん。50mのときすんごく綺麗だった。なんかこう、ぐあー!ってなって、キラキラしてて魔法みたいだった!轟~って感じの個性だよな、氷って。クールクール!なんと言うか、勝己とは正反対だよな。あ、勝己ってのはあの爆破の個性の、えーと、ほら、ボール投げでデモンストレーションしてた口が悪いやつね。轟はあんま喋んないし個性も静かでさぁ、なんか達観してるっつーか、大人って感じだよな。あっ、そうだ!勝負な、負けたのは悔しいけど結果は結果だし、ほら、さっさと言えよ」
数回瞬きした後で、轟は漸く口を開いた。