第8章 先生、幼馴染たちの仲が悪いです
轟の個性は氷か。空気中の水分を氷結させているんだろうか、それとも掌から氷を出しているんだろうか。もしかしたら全く違う方法なのかもしれない。聞いたら答えてくれるかな。
「みんな個性すごいなぁ」
思わずそう呟いて、九十九はハッとした。氷の個性。だから轟はあんなにクールなのか?
「確かにみんな凄いけど、きゅうちゃんのも負けてないよ。モノに命を吹き込める個性は汎用性が高くてヒーローとして活躍する上でもすごく強力だ。小型のモノに個性を使えば、敵に姿を見られず情報収集できるし、被災地で瓦礫に個性を使えば下敷きになっている人を助けられる。怪我人の運搬もその場にあるものを使えるからストレッチャーも必要ないし、自分は手が塞がらないから身軽に動ける。確かに攻撃力に関しては多少難有りだとは思うけど、それだって入試のときの仮想敵みたいなモノに個性を使えば解決できるわけだから」
お得意の猛スピードトークを始めた出久から、じりじりと一歩離れる。
「照れる!もうお腹いっぱい!ってか出久、入試のとき一緒の会場だったっけ!?なんで戦略バレてんの!?」
「ピーピーうっせーんだよクソどもが!さっさと準備しろや!」
勝己の怒鳴り声で我に返った出久が、慌ててスタートラインまで走っていく。出久の勢いに押されて気がつかなかったが、どうやらいつの間にか彼の番が回ってきていたらしい。
苛立ちを隠そうともしない勝己が、すれ違いざまに九十九を睨みつけた。