第8章 先生、幼馴染たちの仲が悪いです
「なに見とんだコラ」
「どっちが勝つかなって」
「ああ゛!?んなもんおれに決まってんだろうが!」
「どうかな。出久の個性分かんないし」
ピキ、と勝己の額に青筋が浮かんだ。
「この俺が、たかがデクごときに負けると思ってんのか」
勝己が押し殺したような声で喋るときはマジギレ寸前のサインだ。これ以上はいけない。九十九が鬼神の前から早目に退散しようとしたところで、相澤先生から救いの声がかかった。
「爆豪、早くしろ」
舌打ちしながらスタートラインに立った勝己を見て、出久が僅かに身を引いた。笛の音と同時に走り出した勝己に一歩遅れて出久が走り出す。勝己の個性を考えると、横並びで走るという行為自体が出久にとって不利になるはずだ。
「爆速!!」
出久の個性が見られるとわくわくしていた九十九の思いはあっさり裏切られた。個性を使って爆風に乗った勝己に吹き飛ばされそうになりながらも、出久は個性を使う素振りすら見せなかったのだ。
「んだよ出久~。出し惜しみすんなって」
ふらふらと九十九の隣に戻ってきた出久は、見ている方まで気落ちしそうな程の絶望の表情を浮かべている。今にも崩れ落ちそうだ。
「どったの出久?ヌイグルミもふる?」
「いい……」
「いいんだ!」
「次、峰田、八百万、八木」
ケラケラと笑いながら出久の肩を叩く九十九に、漸くお呼びがかかった。