第7章 桜のさの字もないな
「よし、トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し除籍処分としよう」
「はあああ!?」
学校を覆い尽くしそうな程の大絶叫が相澤先生に伸し掛った。
「生徒の如何は先生の“自由”。ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ」
にやりと人の悪い顔で髪をかき上げた相澤先生の瞳が赤く染まる。九十九は思わずその場にひっくり返りそうになった。
いやいやいや、死ぬ程勉強してどうにか狭き門を潜ってここまで来たのに、初日からいきなり除籍て。いやいやいや。そして同時に不味った、と彼は思った。
どうしよう、バニーしか連れてきてない。まあ必要ないだろうと思ってポーチごと教室に置いてきてしまった。雄英を侮っていた過去の自分に歯噛みする。プロはどんな時でも即座に対応できなければならない。そんなことは基本中の基本だ。それをまあ、アホみたいにおれは……バニーの協力だけでこの窮地を突破できるだろうか。スピードならヌイグルミたちの中で随一だが、バニーは繊細さもまた他の追随を頑として許さなかった。
九十九はそっとポケットに手を伸ばした。途端にバシッ!と乾いた音を立てて振り払われる。遊ぼうとしていたところを無遠慮に引っ掴まれた上、強引にポケットに突っ込まれたバニーは完全にヘソを曲げてしまっていた。