第7章 桜のさの字もないな
「ごめんて。ホントごめん」
バニーを撫でて機嫌をとりつつ、ソフトボール投げの攻略法について考えを巡らせる。ボールに個性を使うか?機械仕掛けのボールには個性を使ったことがないからどうなるか分からない。飛距離、伸びるかなそれで。ううむ。取り合えずやってみるしかないか。50m走は是非ともバニーに協力をお願いしたいところだが......このままだと難しいかもしれない。それに、まだクラスの大半の人たちの個性を知らない状態だ。戯れに轟に勝負を吹っ掛けてはみたけれど、すんごく個性把握テスト向きの個性だったらどうしよう。あっさり負けてしまうのはちと悔しい。九十九は口々にブーイングする生徒たちを見渡した。
「最下位除籍って…!入学初日ですよ!?いや初日じゃなくても…理不尽すぎる!!」
「自然災害…大事故…身勝手な敵たち…いつどこから来るかわからない災厄。日本は理不尽にまみれてる。そういう理不尽を覆していくのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったならお生憎。これから三年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。“Plus Ultra”乗り越えてこい。」
人の悪い笑みを口元にだけ浮かべた先生を見て、九十九はおや?と思った。瞳の色が黒に戻っている。あれが、彼の個性なのだろうか?いや、瞳の色を変化させるだけってのはないだろう。個性を発動させると瞳の色が変わるのだろうか。出久なら何か知っているかな。ついと視線をやった幼馴染の額には、玉のような汗が浮かんでいた。そりゃそうだよな。最下位除籍って怖すぎ……あれ?そう言えば、出久の個性って、なんだ?九十九の眉間に皺が寄る。なんで今まで気がつかなかったんだろう。彼は無個性だ。頭のいい出久のことだからペーパーテストは難なく合格できるだろが、あの実技試験をどうやって突破したんだ?
「さてデモンストレーションは終わり。こっからが本番だ」