第6章 未知との遭遇、初日から
「教室、こっちだよね。ってどのクラスかまだ聞いてなかったね!!アハハハハ!!どこだろうね教室!!俺も勢い余って前の教室に来てしまった帰りなんだけどね!!よく考えてみたら学年一個上がってたよね!!」
1m程先の壁に現れた顔は、再びテンション高く喋りだした。なんだアレ。本当に何なんだ。驚きすぎて幽霊だと思ったけど、よく考えたらここは雄英だ。もしかすると壁を移動できる個性の人なのでは?学年が一個上がったってことは恐らく先輩だろうし、こんな面白い先輩がいるなんて流石雄英、恐るべし。ようやく冷静になると同時に、むくむくと湧き上がる好奇心が恐怖心を凌駕する。
「おれ、九十九って言います!!ヒーロー科の1Aです!!触ってもいいですか!?」
「元気があってなによりだよね新入生!俺はミリオ!触ってもいいよ!噛み付かないよ!」
お言葉に甘えて、恐る恐る顔に手を伸ばす。触り心地は普通の人間だ。出久のような柔らかい頬に思わずうっとりする。
「アハハハハ!!くすぐったいよね!!」
クリクリとした特徴的な目をそっと両手で覆い隠すと、孤月を描いた口が「見猿」と言ったのを最後に再び彼の姿が消えた。それと同時に予鈴の音が聞こえてきて慌てて時計を確認する。時刻は8:20。
「九十九君!教室はこの階段を上がって右手に曲がって直ぐのところだから!それじゃあ俺もそろそろヤバイから行くね!」
「色々とありがとうございました!」
「いいってことよ新入生!初日から大変だと思うけど折れずに頑張ってね!」
壁からにゅっと生えてきた手がサムズアップしながら消えていった。ミリオ先輩、顔以外も出せたんだ。っといかんいかん。折角教えてもらったのに遅刻したら大変だ。階段を駆け上がり、はやる気持ちを抑えて「1A」と書かれた扉の前で息を整える。第一印象は大事だ。九十九は大きく息を吸い込むと、元気よく扉を開け放った。