第2章 つくもがみといっしょ!
「サボ以外はいやだ。学校のPCのやつらは気に入らん。」
エースがまたぷいっと顔を背けた。顔が赤い気がする。エースは褒められるのに弱いのだ。かわいい弱点だ。
「でもマルコとは仲がいいでしょ」
「あいつはいいやつだからな」
マルコは学校の最上階にあるPCの中の一つだ。最上階は、窓から見える景色がきれいだと学生から人気のお勉強スポットである。その窓際のど真ん中にマルコはいた。誰がやったのか知らないが、PCの枠の部分にパイナップルの絵が描いてあるので、一目でマルコだとわかる。それに最近のマルコは、誰にも使われていないときは自分の前に置かれた椅子に座って、中庭の桜の木を見下ろしていることが多い。特徴的な頭のおかげで、遠目でもすぐにわかった。
「でもあの席ここのところ人気なんだよね。マルコはエラーが少ないって最近有名だし」
「お前が叩き起こしたんだろ。マルコがぼやいてたぞ」
「いや、仕上がったレポートを印刷しようとしたらエラーが出たもんだから、ついぶっ叩いちゃって。付喪神がいるって知ってたらあんなことしなかった。絶対」
「いいや、するね。おれが朝起こす度に殴ってくるじゃねェかお前」
「寝起きは仕方なくない?」
「わかった。もう起こしてやんねェ」
「それはっ!それだけはエースさま!!留年しちゃうから!!」
正直単位はぎりぎりである。新学期が始まる際に、科目登録をしようとしてサボにバレてお叱りを受けたばかりである。
「いいんじゃねェか別に。留年しても」
エースは大学にいる付喪神たちのことも結構気に入っている。特に、中庭の桜の大木の付喪神である白ひげのおやじさんのことが大好きらしい。お弁当を食べるときは必ず中庭に行けと言われるほどだ。雨が降っていても中庭でご飯を食べるせいで、友達の間では「ご飯を食べるときには外に出ないと死んでしまう病気」だと思われている。どんな病気だ。いつもエースに文句を言ってやろうと思うのだが、エースがほくほくと幸せそうな顔して戻ってくるのを見ると、どうでもよくなってしまうのだった。私も大概スマホに甘い。エースと言い合いながら歩いているうちに、やっと家の前までたどり着いた。家の窓から明かりが漏れている。