第2章 つくもがみといっしょ!
沈んだ気持ちでお皿を台所に持って行くと、サンジ君がお皿を受け取りながら、もう片方の手でそっと頭を撫でてくれた。
「七海ちゃん、おれとサボは家から出られないし、何かあっても直ぐに駆けつけてあげられない。君が心配なんだよ」
サンジ君は、優しい。声を荒げて起こったことなんか一度もない。その代り、こうして眉を下げて笑うのだ。怒られるより心臓が痛くなるから、私はサンジ君に窘められるのが苦手だった。
「うん。ごめんなさい」
「なんだ?七海怒られてるのか?元気の出る曲かけるか?」
ルフィがそう言いながら、ぱたぱたと駆け寄ってきた。いつもは頭に乗せている麦わら帽子が、今は首の後ろで揺れている。
「ううん、ルフィありがとう」
「明日は10時起きだぞ。さっさと寝ろよ」
エースが布団の上で寝っころがりながら言った。そこは私の布団ですが。
「シャワー浴びたらね」
「おう、布団温めておいてやるよ」
「エースだけずりィ」
「おれは先に寝てるぞ」
サボがふっと姿を消した。昨日は徹夜させてしまったから、疲れがたまっているのだろう。申し訳ないことをした。次からはもっと計画的に課題をやらないと。
「うん、おやすみ」
どういう仕組みかわからないが、付喪神は寝るときには姿を消す。エースとルフィは気が付いたら布団に潜り込んでいたりするが。洗面所で服を脱いでいる最中にも、扉を隔ててみんなの声が聞こえてくる。たまには、みんなでのんびり家ですごしたいな。バイトの入っていない日を後で確認しておこう。その日は、サンジ君とケーキを作ってみんなで食べたいな。遠くから、ルフィの元気な笑い声が聞こえてきた。みんなの声を聞くと、家に帰ってきたのだと実感する。今日もにぎやかな我が家が、私は大好きだ。