第2章 つくもがみといっしょ!
私は、どういうわけか小さい頃から付喪神が見える体質だった。ひいおばあちゃんが同じような体質だったらしいが、家族には私のような「見える人」はいない。それでも気配を感じることはあるらしく、私にPCを譲ってくれたのもそのためだった。遠くへ行っても寂しくないようにと。PCに「よろしくお願いします」とお酒を供える家はなかなかないだろう。サボが酒を飲んで酔っ払ったせいで、その日一日PCが動作不良を起こしていたが。
サボは紳士風な装いの温厚な付喪神だ。幼い頃は一緒にやんちゃもしたが、今はうちの家計を家計簿ソフトによって管理してくれるほど頼もしく成長していた。私も一応バイトはしているのだが、付喪神は燃費が悪いのが多くて出費が嵩むので、サボは切りつめられるところはがんがん削ってくる。飲み会も3回に1回くらいの出席率だ。
「七海、line来てるぞ」
「誰から?」
私がそう聞くと、エースがあからさまに嫌そうな顔をした。
「この間合コンしたやつ」
「しつこいねその人」
確か、流れでlineだけは交換したが、明らかに体目当てだったので、ずっと既読無視をしている相手だ。正直なところ、もう名前も覚えていない。
「だからやめとけって言っただろおれは」
「ちょっと見た目がよかったからつい」
「いつか痛い目見ても知らねェからな」
エースがじとっとした目で私を見た。
「そうなったら助けてくれると信じてるよマイスイート」
エースに頭を叩かれた。また、いつの間にか実体化している。実体化するとエネルギーを多く消費するらしいのでそんなにしない、のに。叩くためにわざわざ実体化するなんてひどい話だ。
「気持ち悪ィんだよアホ。そうだな、もう二度と機種変の話をしないなら助けてやらんこともない」
「まだ根に持ってたの」
「当たり前だ。直ぐ他のに目移りしやがって」
「だって最新の機種だったんだよ」
「おれだって割と最近のだぞ・・・まだ3年目だし」
エースがふてくされてそっぽを向いてしまった。さすがに申し訳なくなってきて、つま先立ちをして頭を撫でた。実はこちらからも触れるのだ。私も、こう、精神的なエネルギーを使うからあまりやらないが。
「エースはPCとの互換性がいいから重宝してるよ。優秀優秀」