第2章 つくもがみといっしょ!
「留年したらお金ないし、エースも解約だよ」
「それは困るな」
「私も困る」
家の前でエースと見つめ合っていると、我が家の窓ががたがたと激しい音を立てて開いた。壊れそうだ。
「七海ー!エースー!おっせェぞ二人ともー!」
「「ルフィ!」」
先に走り出したエースに手を引っ張られて、私もつんのめりながら駆けだした。玄関からサンジ君が顔を出す。
「七海ちゃーん!デザートできてるよー!」
その後ろからゆっくりと出てきたサボは、すごくすごく笑顔だった。
「おい七海、合コン行ったんだって?ちょっと詳しく聞かせてくれよ」
「・・・エース、サボにバラしたの?」
階段を上っていたエースの肩がぴくっと揺れた。エースがぎこちない動きでこちらを振り向く。
「いいえ」
「この裏切りもの!!」
エースの背中に頭突きを食らわせながら家の扉をくぐると、ルフィが飛びついてきた。
「お帰り七海!エース!今日はなんの曲にする?」
「ルフィのおすすめで」
「おう!」
直ぐにビンクスの酒が流れ出して、部屋の中が一層賑やかになった。サンジ君の出してくれたデザートは、グレープフルーツのコンポートだった。円形に盛られたグレープフルーツと、彩に添えられたミントの色合いがとてもきれいで、減退していた食欲を刺激する。
「サンジ君、いただきます!」
「どうぞ、七海ちゃん」
サンジ君が台所から笑顔で手を振ってくれた。それを遮るように、サボが机の前に腰を下ろした。
「それで?」
「うっ」
コンポートを咀嚼しながら、そろりとサボから目を逸らす。ルフィとエースがサボの後ろでじゃれている。大型の猫のようだ。
「あの、ですね。人数合わせのために参加しただけでして」
「おれに相談もなしにか」
「合コンだし、お金は向こう持ちだったよ」
「あのなァ、そういうことを言ってるんじゃねェだろ。エースがついてたからいいものの、もし一人でいるときになにかあったらどうするんだ。七海は女の子なんだから、少しは危機感を持て」
「はい・・・」
サボは最近よくこういう叱り方をする。女の子だからってなにさ。ずっと兄弟みたいにして育ってきたのに、急にそんな突き放すみたいなことを言わなくたっていいのに。男の子に生まれたら、また違ったのだろうか。