第43章 煙 くゆりて 人 攫う
源蔵が初めて生み出したと言う、政宗の為の刀。
それは、薄鈍色に輝いて、瑠璃の瞳の色に似て見える。
刀の名は「銀光丸」
(まだ、荒削りだが、悪くない。
俺の眼は間違いなかったみたいだ)
政宗は表情を少し緩めた。
あの日の早朝、
源蔵は師匠の刀造りを手伝って、寝ずの火番をした帰り、今小路二条家から不審な輿が出るのに出くわし、
後をつけたのだった。
「でも、光秀さん、刀の鞘の中にもう一つ文があるかもしれないなんで、よく気付きましたね」
美弥が感心したように光秀を見ている。
「関所を通る時や、そのほかでも、
誰に中身を改められるか分からない時は、
贈り物として文を付けたその中に本質を隠す事はよくある」
なんでもなさそうに、光秀が答えた。
(よくある…って、光秀さんの基準だよね…)