第43章 煙 くゆりて 人 攫う
『兄さん、久しぶりだな。
こんな形で文を書くとは思ってなかった。
姫さんが京の常楽院で手を縛られ、
馬に乗せられて連れて行かれるのを見た。
何で姫さんが、京に居て、
早朝に今小路二条家を出発するんだ。
用事で来たなら1人じゃないはずだろ?
姫さんが連れて行かれようとしている場所は句に書いた。
兄さん、外装は全くまだだけど、
兄さんの為に俺が初めて鍛えた刀だ。
これで、ってわけじゃないけど、
姫さんのこと、助けてやってくれよ。源蔵』
「源蔵さんって、前、政宗のこと訪ねて来た人でしょ。
今、京都に居るんだね」
美弥が思い出して笑う。
「そいつ、信用出来るのか?」
やはり、一度は疑う秀吉。
「ああ、俺の拾った刀鍛冶見習いだ。
今、京で刀工の道を学ばせてるところだ」