第7章 義臣と疑心
(今朝のは、本当に、「扱いが解らない」と言われたって事か……)
確信の持てぬままに納得せざるを得なかった。
政宗の表情をみた瑠璃は
クスッと笑って言った。
「小十郎様は私の素性を知らないから、
疑ったり、災いの凶元に思えたりするんでしょうね」
政宗は目を見張り瑠璃を見る。
「それは、 仕方ない事です。
政宗は、私が未来から来た、下冷泉 藤原の娘だと知っているから、なんの疑心も持たないでしょう?
でも、他の人はどうでしょう。
どこの誰かも判らなければ、信用するのは難しいです。
政宗に仕える人にとっては尚更じゃないでしょうか。
ですから、小十郎様が私を信用出来ずに居て、光秀様の所に送りたい、と思った事は理解しますし、私は悲しんだり、傷ついたり、怒ったりと言う事はありません。
そう言うことです」
政宗が言わんとし、言えないでいた事を瑠璃は、サラリと説明してきた。
(分かってやがったな……参った…)
政宗は空を見上げた。
そんな政宗に明るい声で瑠璃が話しかけてくる。
「政宗は何か気付いて、こうやって気にかけてくれて、外に連れ出してくれたんでしょう?」
「あぁ、お前、城の中じゃ何にも見せないからな」
「それね、私も私の嫌な所です。
つい、習慣的に隠そうとしてしまうんです」
そう言って瑠璃も空を見上げながら、
憂いを帯びた声で続けた。
「表情ひとつで、相手の言葉を私の思うように持って行く事も可能です。
例え、私の本心とは違う表情や発言だとしても……。
そんな私は、私が嫌いです。
いなくなればいいのに…。
今朝はそんな想いが表に出てしまった様で……
醜い処をお見せしてしまいました」
恥入りながら自虐的に言ってはいるが、なかなか、恐ろしい事を言っているな…と政宗は心の中で思った。
「ふふふ、
敵に回さない方が良いですよ〜」
瑠璃は政宗を冗談気に牽制して笑う。
「回さないさ。
ずっと、側に置いとくー…」
と、言いかけて、ハッとした。
(なに、言いかけてんだ、俺…)
慌てて口を押さえ、顔を背ける。