第43章 煙 くゆりて 人 攫う
「意外やな、姫さん 京の人か。
ええ部屋 用意致しまひょ」
公家男はニンマリと腹の読めない笑顔を瑠璃に見せる。
「今小路二条殿!」
瑠璃を連れてきた粗暴な男が、
公家男の勝手に声を上げる。
「ええやないかいな。
生い先命も短いよってな。
最後に美しいモノを見とくのも冥土の土産よ」
「そうですね。
誰もが明日は分からぬ命でっしゃろ」
うふふふふ と瑠璃も優美に笑って見せた。
(今小路二条…どうせ滅びる一族よ)
瑠璃は優美な笑顔に冷たい眼で公家男を見た。
雅な言葉と笑顔に底知れない悪意を隠して
会話をし合う。
これが公家の世界。
瑠璃の育ってきた家
今小路二条がいつ絶えたのかは分からないが、
事実、瑠璃の時代には既に滅んでいて、
その名は、史実書の中にしか存在しない。