第43章 煙 くゆりて 人 攫う
瑠璃は、もの凄く嫌な気分だったが、
されるがままに、感情の無い人形のような顔で男を見てから、
「…美しい…お庭ですこと…」
と静かに言った。
丸い顔の公家男は、驚いた顔をしたが、
「わかるか〜。そうやろ〜。
けどなぁ、危うく魔王に焼かれてまうところやったんやで?」
チクリ っと嫌味を口して来た。
「それは、難を逃れてよろしゅうおした。
これ程 手入れのゆき届いたお庭、
のぉなってはもったいない。
月夜はほんに 風流でっしゃろ?
ウチもお庭見ながら、横になりとうございます」
人形は人間らしく、最高の笑顔をして見せた。