第43章 煙 くゆりて 人 攫う
どの位経ったかは分からないが、
輿が止まり、外の人の話し声が大きく聞こえて来た。
『首尾よくいったようやな。ほな、一晩泊まっていきぃな』
『助かります』
『ええって、ええって。
明日は早朝に出発しはるんやろ。
今日ははよぉ 休みなはれ』
(京都まで連れて来られたんか…)
耳を澄まして会話を聴いていると、
輿の戸が開かれ、引きずり出された。
外はもう日が落ち、暗くなり始めていた。
「こらぁ、べっぴんさん やなぁ。
色白でまるでお人形さんのようや…
あの魔王が気にいるハズやわ」
邪薄な笑みでこの屋敷の主人であろう男が、
瑠璃の顎を掴み、左右に振って品定めする。
着ている物は、公家と思われる。