第43章 煙 くゆりて 人 攫う
「お八つ の刻を過ぎてるから走って帰って来たのか?」
おやつ の為に走って来たのかと、
呑気に尋ねる政宗が恨めしい。
「ま…ね…そん……ゆう……に……」
上手く言葉が出て来ない。
「とりあえず、水飲んでから喋りなよ」
呆れながらも、家康が水を差し出してくれて、
それを受け取る美弥の背後から、
お夕 が転がるように慌て出て来て、
政宗の前に土下座をする。
侍女の突然の土下座に皆、目を丸くして驚いている。
「政宗様っ、申し訳ございません‼︎」
「お夕か。お前も美弥と一緒だったのー…」
「申し訳ございませんっ!」
お夕がもう一度、畳に頭を擦り付けて謝る。
「…瑠璃はどうした。一緒に走って来なかったのか?
謝る理由は何だ。お夕、顔を上げろ」
命令され、恐る恐る顔を上げたお夕は泣いている。
「ゔ…ぅぅ……政宗様ぁぁ〜」
号泣だ。
号泣しながら、守り刀を差し出す。
雪笹の家紋の入った装飾美しい懐剣。