第7章 義臣と疑心
「おいおい、じゃ、俺はどーなんだよ」
「政宗は、この地を治める方ですから、
遠慮などいらないでしょう。
私は普通の人です」
「普通ねぇ、
俺と一緒の時点で『普通』では
なくなってるんだよ」
と、額を小突く。
「そーれーにっ、
ここはお前を縛ってたものは何も無いって
言ったろ?
もっと自由に自分らしくして良いんだ」
真っ直ぐに政宗が瑠璃を見る。
「お前は、お前の意思で何でもして良いんだ。
お前が気を使っていただろう家も、
家族もここには無い」
政宗の瞳は強く優しかった。
何にも言わない瑠璃に対して政宗は問う。
「家族も家も無くなったのは残念か?」
その問いに、フルフルと頭をふり、小さな声で否定の言葉を口にした。
「いいえ……
残念とか、寂しい思いはありません。
ただ…」
少しの間口を噤む瑠璃。
「私らしく……って言われても難しな、と。
私らしくしてたら、今までと同じなのかな?
よく分からないわ」
困った様に苦笑した。
それを見て、政宗は思わず溢す。
「その困った笑い顔、可愛いな」
政宗の予想外の台詞に、瑠璃は真っ赤になって俯いた。