第2章 女神の正体
(今のコイツと、さっき礼を述べてきた時の
コイツ…
差がありすぎだろ。どっちが本物なんだ?)
訝(いぶか)しんだ…と言うより、
興味が湧いて政宗は瑠璃に申し出た。
「一緒に喰っても良いか?」
瑠璃はまたも不思議そうな顔をする。
「?
もちろんです。
ここ、政宗様のお城ですのに、
政宗様が私に聞くなんて、おかしいっ」
と、瑠璃は クスッと笑った。
「お、いい笑顔だな。
良かった。
それ程、心配はいらなそうだな」
政宗も笑う。
人間に矢を放ったのはおそらく初めてだろう。
自分は人を殺したと泣いた。
当たり前の反応だと思う。
心が壊れていないかと懸念していた。
先に掛けた言葉で、少しでも罪の意識が軽く、
傷が浅くなっていれば…と願うしかなかった。
どう見ても瑠璃は普通の女だ。
しかも500年後の平和な日ノ本から
来ただろう女。
(アイツと同じなのに……)
政宗は向かいに座っている瑠璃を
じっっ と見る。
「政宗様…なんでしょう…」
瑠璃は政宗の視線を受けて、
戸惑いがちに声を上げる。
「ん?
お前…美人だなーと思ってな」
真面目な顔で、政宗がそう切り返すと、瑠璃は
パッと下を向いて、手で顔を覆った。
「やめて下さい。そんな事ありませんからっっ。
恥ずかしいじゃないですか…
(化粧品もしてないし、髪もバサバサだし、
きっと、お肌はテッカテカだよね…)」
最後の方はボソボソと1人で呟いている。
「なんで恥ずかしいんだよ。
美人だって褒めたんだぞ」
と政宗が言うと、今度は、バッと顔を上げて、
真っ赤な顔で困った様に眉を下げて政宗を見る。
(困ってんなぁ〜けど、ちょっとおもしれぇ…)
政宗は困らせるつもりはなく、美人だと率直な
感想言ったまでだったのだ。
膳が運ばれ準備が整う。
「お前は久しぶりの食事だから、粥にした。
喰えるだけ喰えよ」
「はい、ありがとうございます」
瑠璃は素直に礼を言うと、手を合わせ
「いただきます」
と言って、匙を手に取り粥を口に運んだ。
ゆっくりと嚥下し、胃まで届く。
「おいしい」
一口食べた瑠璃は、小さな花が
ほころび咲いた様にそっと笑った。