第39章 安土凱旋帰還と平穏の日
「なんでそんな、簡単にっ…」
軽々しく言った光秀を瑠璃は、もう一度
ドンッッ と叩いた。
「怖いの、痛いのは最初だけ と言うであろう」
人の悪い笑みを瑠璃に向ける。
「なんの話をしてるんですか」
「さあ、何だろうな」
のらりくらりと躱される。
「それは…そのうち慣れて麻痺するとでも言いたいんですか」
「お前がそう思うなら、そうなんだろうな。早く慣れろ」
光秀はまた意地悪く笑う。
「慣れたくなんてありませんよ…」
瑠璃の声音が悲しげに低くなる。
「この世で生きるのなら、全て受け入れ慣れろ、
と言っているだけだ。
傷恨を忘れろ と言ってる訳じゃない。
お前は誰かさんと違って、賢いと思っていたが、そうでもなかったようだ。残念残念」
白々しい。
「………揶揄うのは…私でなく美弥さんにしてください」
渋々。
「おや、俺から逃げるのか」
「この状態では逃げられません」
「それは、物質的なことであろう」
さっきの自分の台詞をそっくりそのまま、光秀に返された。