第39章 安土凱旋帰還と平穏の日
震える涙声を瑠璃が絞り出し
光秀の着物を強く掴み、ギュッッと目を瞑った。
(やはり、長政の臨終の瞬間か…)
光秀はおおよそ予想していたが、
瑠璃の口から言わせる為、あえて、
具体的に問わなかったのだ。
「思い出したくは無いだろうが、アレが信長様を敵に回したヤツの結末だ」
光秀は感情のない声で静かに人事のように言う。
「つっ…」
瑠璃が光秀を見上げ睨みつけた。
(そうだ、目を開け、顔を上げろ)
「結末も結果も分かってます!」
(それを見てきたんだからっ!)
相手が光秀だからだろうか、瑠璃らしくないほど声を張り上げ、語気を強め反論した。