第39章 安土凱旋帰還と平穏の日
安土へ向け出発してから少しして、
光秀が腕の中の瑠璃に声をかけた。
「少しは落ち着いたか」
返答なし。
「自分が放った矢で、人が死んだのが怖かったか。それとも、殺されてゆく人を見たのが怖かったか」
無言でフルフルと小さく頭を振る。
「…だとしたら、政宗が恐ろしかったか?
闘っている時の政宗は大概、あんな感じだ」
それも、頭を振って否定する。
(恐かったけど、政宗が恐ろしかったのは、
政宗のせいじゃない…)
「…では、何がそれ程 怖かったのだ」
いたわるように優しく、そよぐ風のようなサラリとした光秀の声音に、流されるように瑠璃が口を開く。
「……自害する人を…初めて、見ました……
殺されて死ぬ人とは…全然違う、表情が……」
頭から離れない。