第39章 安土凱旋帰還と平穏の日
(政宗は悪くない。
政宗が怖いんじゃない。
…だけど、怖い……)
政宗の纏う陰鬱として殺伐として陰惨な気が、血飛沫と血溜まりの部屋に同調して、政宗を恐ろしい鬼神のように見せていた。
「今はまだ、側に寄れないー…か」
出立前、光秀が瑠璃の心を察して、そう言った。
「俺の馬に乗るか」
その言葉に、瑠璃は安堵すると同時に、
悲しく済まなそうな瞳で、光秀を見上げた。
それを受け止めた光秀は、瑠璃の肩を抱くと、
自分の馬へと連れて行く。
(危険にも拘らず、俺についてきた。
戦で人が殺されるのも慣れていなくて、
恐ろしいはずなのに、気丈に耐えたが、
さすがに自害する場面は堪えたか)
青白い顔で泣きそうな瑠璃を哀れみながら、
光秀は、自分の体温で安心させ、
守るように前に乗せ、手綱を握って出立した。