第38章 戦勝し戴天に近づく
心もとない蝋燭の灯りを頼りに、嫡男嫡子、その他 妻 側室や乳母、浅井氏と共に小谷城に居た非力な者達が、地下道を急いで進んでいた。
「奥様、若様、急いで下さいませ」
「さぁ、はようっ」
「母上ぇ、父上様は?」
「後からいらっしゃいます。
貴方は早く此処から逃げるのですっ!」
最奥の石段を登り小さな扉を開ければ外だ。
「つっっ」
眩しい光に目がくらむその先には、
生き延びる希望の道が続いて、
いない……。
「全員 捕らえろ」
光明の出口で聞いたのは、希望を打ち砕く絶望の声音。
信長を将に明智軍が逃亡者を捕獲する為に待っていた。
「ど……どうして⁉︎」
久政の妻であろう女性が悽愴※たらしい声を出す。
※悽愴…悲しみ悼む。