第38章 戦勝し戴天に近づく
短い間に、人が死ぬまでの色々な音が、
一つひとつ耳に響いて、とても長く長く感じた。
この時代に来た初めての時のよう。
身体…否、足に力が入らない。
他の箇所は強張る程に力が入っている。
ガクガクと震え力の入らない足で、
なんとか立ち、光秀にしがみついて、
強く目を瞑って、意識を手放すのを必死に耐える。
何人かいた長政の重臣達も、その場で全員 自害した。
瑠璃は政宗の凌殺の気と、長政を襲う死の音を感じながら、光秀の腕の中で、生の音を聞き体温を感じる。
背中合せの生と死を肌で感じ、身を以て実体験した。
<口惜しくも 命と時に 限りあり
人の生き死も 花とまた似て>
こうしてこの日、小谷城は落城し、
北近江 大名 浅井氏は3代で滅亡。
後に城は廃城とされる。
織田に対し、数度の裏切りがあったため、
信長の浅井への仕置は苛烈を極めた。