第38章 戦勝し戴天に近づく
「………」
長政はもう逃げられない、とようやく悟り、
跪いて項垂れる…そして、そのまま…
持っていた刀で腹を掻っ切った。
「ぐゔっっ…がっ……はっっ…」
苦悶に眉を寄せて、口から鮮血を溢し、
目をこれでもか と見開いた絶末の顔。
それをみた瑠璃は、弾かれるようにバッッ っと長政に背を向けて、光秀の胸に縋りついた。
(震えるが、止まらない……)
光秀に顔を押し付け、目を瞑っていたその耳に、
ズッシュッッ と鈍高い音が届いて
「ゔぅ…っっ…」
喉の詰まるような声がして…
ドサッッ…と人が倒れる気配がした。
「‼︎」
(人…が…浅井、長政が……)