第38章 戦勝し戴天に近づく
長政はとうとう本丸、最上階にまで追い詰められた。
「最期だな」
政宗が食い千切りそうに凶暴な笑みで、
ジリジリと間合いを詰める。
「まっ、待ってれ!妻や子を逃す時間を!」
長政は死を目前にして血迷ったのか、
とんでもない事を言っている。
呆れた命乞いだ。
「はぁ?何 寝惚けた事言ってんだ。
俺を笑わせたところでお前の命は助からねぇぜ」
政宗か鼻で笑うその後ろから、
「ご安心なさって下さい。
女 子供はワタクシ達が地下の抜道へとご案内致しました」
小姓姿の瑠璃が冷粛として頭を下げる。
「逃した」とは言わない。
「案内した」とだけ言って。なぜなら、
助かったか助からなかったかは解らないからだ。
「だとよ。さっ、潔くその命 差し出せ」
戦慄として殺伐、政宗の黒い気が長政を捉える。