第38章 戦勝し戴天に近づく
8百の兵を指揮する浅井久政は徐々に追い詰められて
「……もはや、此れまでか……」
まだ残る先ほどの怒りに任せて、斬り込んで来た家康と、その兵に囲まれた久政は無念の台詞を口にした。
「俺に殺されるか、自害するかは、選ばせてあげるよ」
そう言われて、いくら諦めの台詞を吐いても頭にくる。
「小僧の情けか?それとも愚弄しておるのか?
笑わせるなぁぁっ!」
久政から見れば、自分の息子よりも若い家康は
小僧なのかもしれない。が、
その小僧に死を突きつけられ、平静でいられる自尊心は今の久政にはない。
「貴様なんぞに殺されるくらいなら、
自ら、死を選ぶに決まっておる!」
顔を赤くして、憤怒の表情で捲し立てるが、
反対に家康は冷めた口調で、
「見苦しいから、吠え喚かずに、早く腹切りなよ」
冷酷非情、興味も無さそうに、自害を促す。