第38章 戦勝し戴天に近づく
「登らせるなぁっ」
「止めろォ」
曲輪 京極丸を占拠し、本丸と小丸を分断され、
久政が居る小丸への織田軍の攻撃は激化していた。
「押せっ、一気にたたみ込めーっ」
小丸を攻めるのは家康。
後方から兵を指揮して攻め上がる。
「クッッ…今川の人質、小国 三河の徳川か…
久政様の元には行かさぬ!」
「……」
自分を侮辱しながら、行く手を塞ぎに躍り出て来た 浅井家重臣であろう将に、凄まじい怒りの殺気で家康は対峙する。
「……その口、2度と開けないよ」
凛慄※(りんりつ)とする程 冷たい殺気が、
一瞬、炎のように吹き上がった。
刹那、
家康は相手の懐に居た。
「⁉︎ ッ、ばっ」
息を飲み 一言 発される前に、家康の刀は喉元を的確に斬り裂き、そのまま、流れる動作で刀を逆手に持ち変えると、胸に刃を押し込んでいた。
「ぐぅぅ……ガッハッッ…」
敵将は絶命し、膝から崩れ落ちた。
「2度とそんなコト、言わせない、誰にも」
薄笑みを、俯いて隠し、誰にも聞こえないように、呟いて溢した。
(俺は強くなる、もっとー……)
※凛慄…ふるえおののく。