第7章 義臣と疑心
「殿、
瑠璃殿を光秀様のもとに送られてはいかがか?
瑠璃殿も喜ばれるのでは⁉︎」
名案だ!といった様子で、揚々と声を上げ政宗の顔を見た
小十郎は、狼狽えた。
「掛かったな、小十郎。
光秀が帰った話は関係ねぇ。
お前、瑠璃をどっかにやりてぇのか。
そうか、そうか、お前瑠璃になんか言ったな。
それでアイツがさっきみたいな顔になったんだな?
ん?違うのか?
それにっ、光秀にはやらん!」
小十郎に早口に畳み掛けて、言いたいことだけ言って、憤怒のオーラを纏い政宗は足早に去っていった。
残された小十郎は、呆気に取られたまま政宗の去った方を見ていた。
政宗はまだ憤りが治り切らないというのに、
目の前で朝餉を一緒にする瑠璃は、既にいつもの様子に戻っていた。
「政宗……
そんなに見られると、穴が開きます……」
「さっき、小十郎に何を言われた?」
政宗は直球だ。
瑠璃も直球で返す。
「小十郎様が私にどう接していいか分からないと仰って……
ですから、居候なのでその様に扱って頂いて構わない、と言う話をしました」
「本当にそれだけか?」
政宗は片眉をあげて怪しみながら、瑠璃を伺う。
「何か隠してたら、お仕置きだそ?」
「隠してません。
本当にそれだけです」
瑠璃はハッキリと言い切った。
清々しい程に、ハッキリと。
「…………」
これには政宗も、何も言えなかった。
(手強いな〜〜)
「政宗、
心配してくれてありがとうございます」
瑠璃はそっとお礼を口にした。
言葉は礼を述べているが、話はお仕舞い、と言っているのだ。
(隙がねぇ…)
城での瑠璃は内を読ませてくれない。