第7章 義臣と疑心
目を見張っただけで、発する言葉も無い
小十郎に代わって、瑠璃は自虐的に笑って続ける。
「私は元々、そう言う家に育ちました。
時代が変わろうと、それからは逃れられないのかもしれませんね?」
ふふふと笑い、スッと視線を逸らした。
「瑠璃殿…」
「おー、瑠璃。
こんなとこで、どうした?」
鍛錬場から出てきた政宗がこちらへ近付いて来ながら声を掛けてくる。
「政宗。
ご苦労様です。
朝餉の支度が出来たので呼びに来ました」
瑠璃が微笑む。
(なんだ?
瑠璃の雰囲気が)
違和感を感じた政宗だったが、
「そうか、わかった。
先に戻っていいぞー」
明るく瑠璃に返事をし先に帰す。
「瑠璃、なんかあったのか?
それに、お前も」
「いえ、私は別に」
「そうか〜
瑠璃が悲しげに見えたが、光秀が安土に戻ったのがよっぽど堪えたのか……」
政宗は腕組みをし思案顔をしてみせる。
「光秀様……
瑠璃殿は光秀様を好いておられたのでしょうか?」
小十郎はさり気なくといった風に問う。
「さぁなぁ〜
まぁ、でも、嫌いではなかったろうな。
良く懐いていたからな」
なんでも無さそうに言うが、政宗は思い出したくも無い気持ちだった。
「懐いて……犬猫でもあるまいに…」
政宗の言い草に小十郎は呆れ気味に返す。