第38章 戦勝し戴天に近づく
半刻前ーー
「再三にわたる降伏状を白紙で返して来た挙句、
先刻の最終勧告も無視……。
主君 六角氏からの離反、俺との同盟も簡単に反故し、武田と連携…軽く見られたものだ。
名の如く、義の浅い 自分勝手にて身を滅ぼす憐れな一族よ」
さして、憐れそうでもなく、鉄扇をパチリパチリと優雅に弄びながら、気怠げに話す信長だったが、緋色の瞳が烈火の如く輝きを増していた。
「この信長を軽んじたこと、
骨の髄まで後悔させてやろうではないか。
くっくくくくっ」
炎獄でも想像しているのだろうか、
信長が眼を眇め、歪んだ口元でゾッとする笑い声を
喉の奥からあげた。
一番出陣は秀吉率いる3千の兵。
(外は手薄だな…。兵力は中に集中させてるのか)
重々しいほど大勢の足音が正門と中門を破って、敷地内に侵入する。
「上からの銃には気を付けろ!
曲輪(くるわ)を占拠する!一同、攻撃開始ー‼︎」
秀吉が大声で指示し、軍配が振られる。
「おおぉぉーーっ!」
大量の兵が城内になだれ込んだ。