第38章 戦勝し戴天に近づく
「死ぬなよっ」
後方追撃隊の政宗、家康も交じり刀を振るう。
手入れの行き届いた、鈍白銀の刃がギラリと輝いて、次々と血を散らす。
首を腕を、胴を撥ねて血に染まる。
刀、それを持つ手、足元、馬の腹までも…。
そんな凄惨なこの瞬間でさえも、
政宗は活き活きと狂喜満悦の笑みを浮かべ、
狩りをする猛獣の如く眼を光らせ、
大物を狙い、刀を振るい続ける。
「家康ぅ!俺の獲物、減らすんじゃねぇ!」
「アンタの獲物は、俺の獲物でもあるんですよ、政宗さん。
早いもん勝ちでしよっ」
淡々としながらも、炎の宿った翠の瞳を政宗に向ける家康。
いつも物静かな家康も、此処では非道で冷血な武将のひとりだ。
結果、一乗谷へ続くこの利根坂で、朝倉一門、忠臣武将を含め、山崎、斎藤、河合なとの大名など、大勢が命を落とした。
しかし、信長軍は徹底追撃の手を緩めず、
翌日までに、朝倉直属軍勢と武将をほぼ壊滅させた。
そしてーーー……義景は手勢のみを率い、
一路、一乗谷へなんとか逃げ帰った。