第38章 戦勝し戴天に近づく
「久しぶりだな、玉瑛」
「ご無事でなによりです。光秀様」
「良い子で待っていろと言っただろう」
「なかなか戻っていらっしゃらないし、
心配し過ぎて来てしまいましたわ。
光秀様のせいですよ」
プンッ としながら笑っている。
「俺の所為、か…。まっ、それでも俺の為とは、嬉しい限りだな。くくく」
笑顔で労い合戦をしている2人を、秀吉が怖い顔で見る。
「俺達は此処から急いで信長様を追わねばならぬ。危険になるだろう。玉瑛、お前は帰れ」
厳し口調で言うのは、瑠璃を危険な目に合わせない為。
なのに光秀は
「連れて行けば良いだろう」
「危険だろうが!」
秀吉が声を荒げる。
「独りで帰すのだって危険じゃないか。
それよりは我々と一緒で、目の届く所に居てくれた方が、安心ではないのか」
「そ…それは、そう…だな…」
秀吉の怒鳴り声には慣れている、 動じる事のない光秀は、
目くじら秀吉を、正論最もらしく説いて、言いくるめてしまった。
「お許しが出たぞ、よかったな、玉瑛」
ニヤニヤと笑いながら、瑠璃の頭にポンッ と手をやる。
「足手まといにならないように気を付けます」
「ああ、俺達から離れるなよ」
「それは大丈夫だ。玉瑛は俺が守ってやる」
光秀の優しい言葉。
けれど、その瞳は何かを企んでいるように瑠璃には見えた。