第38章 戦勝し戴天に近づく
この時代、この場所には、居場所があるように思えた。
私を信じて、頼ってくれ、
私が望めば応えてくれる人々がいる。
(望んでも良いんだっ)
自然と笑みがこぼれた。
息が上がっても、雨に濡れて身体が重くても、
心は羽のように軽かった。
駆けて駆けて、ひたすら駆けるーー……。
飛ぶように駆けて、
「⁉︎」
激走する馬の蹄の音に緊張が走る。
警戒しながら、目を凝らしていれば、
「…ーーま〜っ……みーーまっ……ひーでーーさまぁ〜……」
よく通る澄んだ声が、切れ切れに弾んで、近づいてくる。
「…じゃじゃ馬娘め…」