第38章 戦勝し戴天に近づく
はぁ…はぁ…はぁ…
まだ降り止まぬ小雨の中。
雨とぬかるみは普段より体力を使うのか、息が上がる。
それでも、休みもそこそこに、駆け続ける。
「一刻も早く届けて下さい。
お二人が下手から追随する為の指示です。
頼みましたよ、玉瑛殿」
乙女の心を一瞬で溶かしてしまう、
戦には到底似つかわしくない天使の微笑で、
優しーく、それでも真剣に言われれば、
頼られた感は尋常ではない。
しかも、久しぶりにその名前で呼ばれ、
瑠璃は擽ったくも、嬉しくてたまらなかった。
信用され、頼ってもらえたこと、
自分の出した提案を受け入れられた事、
それは、自分を認めてもらえ、存在肯定されているようで、心が躍るほど嬉しかった。
その気持ちのまま、瑠璃は馬を駆った。