第38章 戦勝し戴天に近づく
「うわぁぁぁ〜〜っ」
「こっ、殺さ、な…い……ゔっ………」
「ひぃぃぃ〜〜」
阿鼻叫喚の雨の中。
血が流れ、恐怖の悲鳴が森の奥まで響き渡る。
ぬかるんだ地に足を取られ、転んだ兵に容赦なく突き立つ刀。
「ゔっ!…あ"っ、ぐぅ…ぅ…ぅ…」
狭い砦内で逃げ惑う兵を追って、
馬上から薙がれた信長の刀が、敵兵の首元を血で染める。
「虫の息はいっそ、ひと思いに止めてやれ」
信長の非情とも思える慈悲の心。
降伏してきた砦の兵を討ち取らず、解放すると言う信長。
「信長……な、ぜ……っ」
殺される恐怖、殺されない屈辱。